よくわかる知的財産権問題


 藤野 仁三 (日本技術貿易(株)IP総研)
 日刊工業新聞社





 藤野仁三氏の新刊本が出版された。氏は日本技術貿易(株)に設立された日本初の知財シンクタンク・IP総研の企画部長であり、本書は2001年夏から2002年末まで日刊工業新聞紙上で連載された「実例に見る知的財産権問題」シリーズを素材として、単行本化にあたって書き直されたものである。

 本書がターゲットとすべき読者層は実務家やこれから知財の世界にかかわろうとする若い方々だけではない。今や知財は衆人の注目を集めるビジネスマターである。内外に対してビジネスをしているビジネスマン・経営者が、「知財リスク」というまだあまり啓蒙されず、しかしながらインパクトが膨大なビジネスリスクのイメージをつかむために、本書は必読の著である。

 そういう意味では、本書は、現在の知財シーンについて、豊富な実例をもとにビジネスを意識してわかりやすく解説したビジネス書、という位置づけにもなろう。特にリスクが高騰している米国事情に関する氏の見識と分析は出色である。

 本書は知財の世界に起こった様々な難しい問題をあたかも一つ一つのショートストーリーのごとく読者に語りかける。その裏付けにあるのは氏の深い経験・知識と明晰な論理力・文章力だけではない。ご一緒させていただくたびに、木訥な語り口で、知財、ひいては日本の行く末に対する熱い想いを披露される氏の見識と情熱がそのまま本書に体現されているからこそ、本書は一つの著としての迫力を持つのである。

 言うまでもなく、氏は、私がもっとも敬愛する知財人の一人でもある。
この本が多くの方々に愛読されることによって、知財という新しい分野が社会に受け入れられ、多くのビジネスに活用されることを願ってやまない。
鮫島正洋 (弁護士)