2003年08月22日

授業の中での知財

Posted by 片岡 忠彦

 早稲田MOTプログラムには、「知的財産マネジメント」や「知的財産概論」などといった、知的財産を正面から扱った科目は(私の知る限り)存在しない(※)。

 しかし、春期に履修した科目の講義の中で知財の話題が出てくる機会は予想以上に多かった。
 例えば、経営戦略の授業で出てきた市場参入障壁の一要素としてのパテント、ミクロ経済学の独占市場との関連でのパテント、マーケティングの授業で出てくる商品差別化の一要素としてのブランドやデザイン、などである。

 特に、会計の授業は、毎回の最初の20~30分ほど、その日の日経朝刊の記事をネタに準備体操的授業を行なうのだが、最近は知財関係の記事が頻繁に新聞に掲載されるため、わりと頻繁に知財ネタが議論の対象となった。
 その会計の授業を担当される松田先生自身もかなり知財に詳しいとの印象を受けた。まさか、会計の授業で松田先生から「最近、審査請求期間が出願から3年に短縮された」ことを聞くとは思わなかった。
 知財ネタが議論の対象になったときは、注意が必要である。「そういえば、このクラスには弁理士さんが居ましたよねぇ。」というセリフを合図に、いきなり話を振られ、意見を求められるからだ。

 いまのところ、MOTプログラムの中での知財との関わりはこんな程度である。


 #余談1:「不意打ち的に意見を求められる」機会は、通常、じっくり考えてからクレームドラフティングや意見書を作成している私にとっては、なかなか得られない刺激的な経験であった。問題の本質を端的に他人に伝えることは、仮にその問題について十分な知識を有していたとしても、なかなか難しい。特に、その「他人」が問題(知的財産)についての予備知識を持っていると必ずしも期待できない場合にはなおさらだ。


 #余談2:弁理士にあまり馴染みのない人は、「知財関連の話題であれば弁理士は何でも知っている」と思っているフシがあるが、このサイトをご覧の方はご承知のように、これは大きな誤りである。これは、ちょうど私のおかんが「大学まで行って工学を学んだうちの息子(私)は、故障した家電くらいなんでも直せる」と思っているのと同じレベルの誤解である。
 
 とは言え、授業中いきなり振られ場合や、他のMOT学生からの質問に対して、「もにょもにょもにょ…」ではあまりにかっこ悪いので、少なくとも新聞やネットニュースに掲載されているような知財の話題についてはチェックし(この点パテントサロンは重宝する)、それに対して自分の意見を持てるくらいにしておきたいものだ。


 ※:早稲田MOTでは、選択科目として早稲田大学アジア太平洋研究科内の国際関係学専攻の科目、他の研究科(商学研究科、法学研究科、理工学研究科)の科目を履修することが可能である。

 したがって、例えば、アジア太平洋研究科で相澤英孝先生が担当される特許法や著作権法の講座、法学研究科で高林龍先生が担当される知的財産法の講座、理工学研究科で元キヤノンの丸島儀一先生が担当される知財関係の特別講座、などを履修することもできるようだ。
 
 また来春、早稲田大学にも法科大学院(ロースクール)が開設されれば、海外からの教員を含め、知財関連科目選択の幅がより広がるのではないかと期待している。
 
 但し、このような選択が制度上可能であっても、やはり「金曜と土曜しか大学に通えない」という制約が加わると、残念ながらこれらの科目を履修することは難しいかもしれない。

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