【コラム】 よい採用,よい転職のために (3)
 〜紹介動画の掲載〜



前回のコラムでは,求人広告に何を載せるかについて考えました。

給与,働き方,仕事内容,教育体制,職場環境,キャリア,選考など,求職者が「自分に合っているか」を判断するための情報を,できるだけ具体的に伝える。よく見せるのではなく,よく知ってもらう。

そのためには,求人広告にできるだけ多くの情報を掲載することが大切だと思います。

しかし,文章で詳しく説明しても,それだけではなかなか伝わらないことがあります。

事務所の雰囲気。そこで働いている人の表情や話し方。所長はどんな人なのか。先輩所員はどんな人なのか。どのような場所で仕事をしているのか。

文章で「明るい職場です」「風通しのよい職場です」と書くことはできます。でも,本当にどんな職場なのか。それは,実際に見てもらった方が伝わることがあります。

そこで,今回取り上げたいのが,紹介動画です。


紹介動画はとても有効な手段

現在,知財業界の求人でも,カジュアル面談や事務所説明会を行う事務所や企業はあります。一方,求人広告に紹介動画を掲載している例は,まだ非常に少ないように感じます。

しかし私は,紹介動画は,求職者側と求人側の双方にとって,とても有効な方法ではないかと考えています。求人広告をより充実させる方法として,もっと利用されてもよいと強く思っています。


求職者は「見るだけ」でいい

紹介動画の大きなメリットのひとつは,求職者にとっての敷居が低いことです。

カジュアル面談や事務所説明会に参加する場合には,申し込みをする必要があります。日時を合わせる必要もあります。場合によっては,氏名や勤務先,経歴などを知らせることもあるでしょう。オンラインであっても,決められた時間に参加しなければなりません。

まだ本格的に転職を考えているわけではない人にとっては,「ちょっと話を聞いてみたい」と思っても,そこまで行動することには抵抗があるかもしれません。

紹介動画なら,見るだけです。匿名で見ることもできます。自宅でも,外出先でも見ることができます。朝でも,夜でも,自分の都合のよい時間に見ることができます。一度見て気になったところを,もう一度見ることもできます。いくつもの事務所の紹介動画を見比べることもできます。

現在の勤務先に転職活動をしていることを知られたくない,という人もいるでしょう。そのような人にとっても,個人情報を知らせずに見ることができる紹介動画は,安心して利用しやすいものだと思います。

「この事務所,ちょっと気になるな」

そのくらいの段階でも見ることができる。これは,紹介動画の大きなメリットだと思います。


動画だから分かることがある

では,紹介動画には,何を載せればよいのでしょうか。

たとえば,

所長からのメッセージ
先輩所員へのインタビュー
実際の仕事の説明
教育担当者からの教育体制の説明
ある所員の一日
オフィスの紹介
実際に使用する机や仕事をする場所
駅から事務所までの道のり
事務所が仕事をするうえで大切にしていること

このようなものが考えられます。もちろん,すべてを動画にする必要はありません。それぞれの事務所が,「自分たちのことを知ってもらうためには,何を見てもらうとよいだろう」と考えてみるとよいと思います。

所長が話している動画を見れば,その人の話し方や雰囲気が分かります。先輩所員へのインタビューを見れば,どんな人と一緒に働くことになるのかを想像できます。オフィスを紹介すれば,毎日どのような場所で働くのかが分かります。教育担当者が話せば,「誰が,どのように仕事を教えてくれるのか」が見えてきます。これらは,文章だけではなかなか伝えにくい情報です。


立派な動画でなくてもいい

「紹介動画を作る」と聞くと,専門の動画制作会社に依頼して,きれいに撮影し,編集した動画を作ることを想像するかもしれません。もちろん,そのような動画を作る方法もあります。

しかし,求人のための紹介動画は,必ずしも多くのお金をかけた立派な動画である必要はないと,私は考えています。

むしろ,あまり演出しすぎない方が,普段の事務所の様子や,そこで働いている人たちの雰囲気が伝わるかもしれません。

所長が,自分の言葉で話す。先輩所員が,普段の仕事について話す。教育を担当している人が,未経験者にどのように仕事を教えているのかを話す。実際に仕事をしている場所を見せる。

それだけでも,文字だけの求人広告からは分からなかったことが,かなり伝わると思います。

ここでも大切なのは,同じです。よく見せるのではなく,よく知ってもらう。紹介動画も,自分たちを実際以上によく見せるためのものではありません。

求職者が,

「ここで働いたら,どんな感じなのだろう」

と考えるための材料を増やす。そのための動画でよいのだと思います。


短い動画を,いくつか作ってもいい

事務所について,すべてを一本の動画で説明する必要もありません。短い動画をいくつか用意する方法もあると思います。求職者も短い動画の方が見やすいかもしれません。

たとえば,

「所長からのメッセージ」
「私たちの仕事」
「先輩所員に聞いてみました」
「私が教育を担当します」
「ある所員の一日」
「オフィスを紹介します」
「あなたが使う机です」
「駅から事務所まで歩いてみました」

などです。求職者は,自分が興味を持った動画から見ることができます。

求人側も,最初からすべての動画を作る必要はありません。まずは「所長からのメッセージ」を一本作る。その後,「オフィス紹介」を追加する。さらに,「先輩所員の話」を追加する。そのように,少しずつ充実させていくこともできます。

内容が変われば,その動画だけを新しくすることもできます。紹介動画は,一度作ったら終わりではありません。必要に応じて,何度でもバージョンアップすることができます。


求人側にとってもメリットがある

紹介動画には,求人側にも大きなメリットがあります。

事務所説明会を開催する場合には,日時を決め,場所やオンライン環境を用意し,説明する人の時間を確保する必要があります。カジュアル面談も,その都度,求職者と時間を合わせなければなりません。

紹介動画では,その必要がありません。一度作っておけば,求職者は自分の都合のよいときに見ることができます。1人が見ても,10人が見ても,100人が見ても,そのたびに求人側が説明する必要はありません。求人側がその場にいなくても,紹介動画が代わりに事務所のことを伝えてくれます。

また,説明会の場合,せっかく準備をしても,参加者が少ないことがあります。特に,会場を用意して開催するリアルな説明会では,参加者が少ないと,少し寂しい雰囲気になってしまうこともあるでしょう。紹介動画には,その心配もありません。


一発勝負ではない

もうひとつ,紹介動画には大きなメリットがあります。

カジュアル面談や事務所説明会は,基本的にはその場で話をします。もちろん,それには,その場だからこその良さがあります。

一方で,

「あれも話せばよかった」
「一番伝えたかったことを十分に説明できなかった」

ということもあるでしょう。紹介動画であれば,あらかじめ何を伝えるのかを考えることができます。

撮影してみて,「少し分かりにくいな」と思えば,撮り直すことができます。説明が足りなければ,追加することもできます。編集することもできます。

つまり,「自分たちについて,求職者に何を知ってもらいたいのか」を十分に考え,納得できる形にしてから届けることができます。これも紹介動画の大きなメリットだと思います。


必ずしも完全公開する必要はない

紹介動画をインターネットで誰でも見られる状態にすることに,抵抗がある事務所や企業もあると思います。必ずしも,すべての紹介動画を完全に公開する必要はありません。

たとえば,

誰でも自由に見られるようにする
メールアドレスを知らせてもらった人に,動画を見るためのURLを案内する
氏名や簡単な経歴などを知らせてもらった人に案内する
応募を検討している人だけに案内する

など,いろいろな方法が考えられます。事務所の方針や,動画の内容によって,公開方法を変えることもできます。

ただ,紹介動画の大きなメリットのひとつは,求職者が気軽に見ることができることです。可能であれば,匿名で,申し込みをしなくても見られる動画があると,より多くの人に自分たちのことを知ってもらうきっかけになるのではないかと思います。


動画は,見てもらうことが大切

紹介動画を作ったら,次に大切なのは,その動画を求職者に見てもらうことです。せっかくよい紹介動画を作っても,見てもらえなければ,その良さを伝えることはできません。

見てもらうために,自分たちの事務所のWebサイトに紹介動画を掲載することもできます。しかし,その事務所のことをまだ知らない人や,転職先を広く探している人に,自分たちのWebサイトまで来てもらい,さらに紹介動画を見つけてもらうことは,簡単ではないかもしれません。

そんなときは,パテントサロンの求人スクエアが役に立つかもしれません。求人スクエアを見ているのは,知財業界での就職や転職に関心を持っている人たちです。その求人広告の中に紹介動画への入口があれば,求人情報を探している人に,動画を見てもらえる可能性が高まります。

さらに,パテントサロンでは,紹介動画が掲載されている求人広告について,求人一覧のページに「動画マーク」を表示します。これによって,求職者は,どの求人広告に紹介動画があるのかを,一覧を見ただけで知ることができます。

求人広告を開いて初めて動画があることに気付くのではなく,

「この事務所には紹介動画がある」

と,求人を探している段階で気付いてもらうためです。これなら,紹介動画があることにも気付きやすくなります。

また,求人一覧にいくつもの求人広告が並んでいる中で,「動画マーク」が付いていること自体が,求職者に興味を持ってもらうひとつのきっかけになるかもしれません。紹介動画を用意し,自分たちの仕事や職場,人,考え方などを伝えようとしている。それは,その事務所や企業が採用に力を入れ,求職者に自分たちのことをよく知ってもらおうとしていることの表れでもあると思います。

動画を作る。そして,その動画を,知財業界で仕事を探している人に見つけてもらう。パテントサロンは,その両者をつなぐ場所になりたいと考えています。


「いきなり会う」のではなくなる

紹介動画には,もうひとつ大きなメリットがあります。

それは,その後にカジュアル面談や事務所説明会に参加するときの,最初のハードルを下げることです。

何も知らない事務所の,初めて会う人と話をする。「カジュアル面談」といっても,求職者にとっては,それなりに緊張することだと思います。

しかし,その前に紹介動画を見ていたらどうでしょうか。面談の場に現れた所長が,すでに動画で見た人である。話をする先輩所員も,動画で見たことがある人だ。説明会で訪れたオフィスも,動画に映っていた場所だ。それだけでも,ずいぶん親近感が違うのではないでしょうか。

また,

「動画で○○についてお話しされていましたが,もう少し詳しく教えてください」

というように,動画の内容をきっかけに話をすることもできます。

いきなりカジュアル面談に参加する。いきなり事務所説明会に参加する。その場合と比べて,あらかじめ動画でその事務所や人を知っていることには,大きな違いがあると思います。

紹介動画は,それだけで完結するものではありません。求人広告から紹介動画へ。そして,紹介動画からカジュアル面談や事務所説明会へ。求職者が少しずつその事務所のことを知っていく。その入口としても,紹介動画はとても有効であると思います。


まずは一本から

紹介動画について,ここまでいろいろなことを書いてきました。しかし,最初から何本もの動画を作る必要はありません。まずは一本でよいと思います。

スマートフォンなどで所長が数分話すところから始めてもよいでしょう。

自分たちがどのような仕事をしているのか。仕事をするうえで何を大切にしているのか。どのような人と一緒に働きたいのか。求職者に何を知ってもらいたいのか。

それを,自分の言葉で話してみる。そこから始めることができます。そして,必要になったら,少しずつ動画を増やしていく。求人広告の文章を少しずつ充実させていくのと同じように,紹介動画も少しずつ充実させていけばよいと思います。


そして,実際に話してみる

求人広告を読む。紹介動画を見る。それによって,その事務所のことをかなり知ることができます。

しかし,それでも分からないことはあります。そして,求人は一方的に事務所のことを知ってもらえばよいわけではありません。事務所側も,求職者がどのような人なのかを知る必要があります。

そこで,次の段階として,カジュアル面談,事務所説明会があります。

実際に話してみる。質問してみる。相手の話を聞いてみる。求人側と求職側が,お互いについて,もう一歩深く知る。

次回は,カジュアル面談と事務所説明会について考えてみたいと思います。

(つづく)

パテントサロン管理人 大坪 和久
info@patentsalon.com


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