【コラム】 よい採用,よい転職のために (4)
 〜カジュアル面談,事務所説明会〜



これまで3回にわたって,よい採用,よい転職のために,求人側と求職側がお互いをよく知るための方法について考えてきました。

 【コラム】 よい採用,よい転職のために (1) 〜最近の求人求職活動概況〜
 【コラム】 よい採用,よい転職のために (2) 〜求人広告に何を載せるか〜
 【コラム】 よい採用,よい転職のために (3) 〜紹介動画の掲載〜

このコラムで繰り返し書いてきたのは,よく見せるのではなく,よく知ってもらう ということです。

求人広告では,給与,働き方,仕事内容,教育体制,職場環境などについて,できるだけ具体的に伝える。さらに紹介動画を使えば,文章だけでは伝わりにくい,人や職場の雰囲気なども伝えることができます。

求人広告で知る
紹介動画でもっと知る

そして,その次は,

実際に話して,お互いを知る

今回は,そのための方法として,カジュアル面談と事務所説明会について考えてみたいと思います。


応募する前に,話してみる

求人広告を読んで,

「この事務所,ちょっと気になるな」

と思った。

紹介動画を見て,

「もう少し詳しく知りたいな」

と思った。

しかし,まだ応募するかどうかは決めていない。そのような段階で利用できるのが,カジュアル面談です。

応募する前に,実際にその事務所や企業の人と話してみる。求人広告を読んで気になったことを質問してみる。

紹介動画を見て,

「動画で○○についてお話しされていましたが,もう少し詳しく教えてください」

と聞いてみる。

求人広告や紹介動画を見るだけでは分からなかったことを,直接質問することができます。これは,求職者にとって大きなメリットだと思います。


「これは応募ではありません」を伝える

ただ「カジュアル面談」という名前を付ければ,それだけで求職者が気軽に参加できるとは限りません。

求職者からすると,

「カジュアル面談と書いてあるけれど,実際には採用面接なのではないか」
「参加したら,応募しなければならないのではないか」
「ここで話した内容が,その後の選考に影響するのではないか」

と考えることもあるかもしれません。
そう思われてしまえば,「カジュアル」であることのメリットが小さくなってしまいます。

そこで求人側には,

これは応募ではありません。
まだ応募するかどうか決めていない方でも参加できます。
話を聞いた結果,応募しなくてもかまいません。

ということを,できるだけ明確に伝えてほしいと思います。

「ちょっと気になる」
「少し話を聞いてみたい」

その段階で話ができる。それが,カジュアル面談の大きな意味だと思います。


求人側にとっても,「知る」機会になる

そして,カジュアル面談は,求職者が求人側を知るためだけのものではありません。求人側にとっても,相手を知る機会になります。

どのような仕事に興味を持っているのか。転職するとしたら,何を大切にしたいのか。どのような働き方を希望しているのか。求人広告のどこに興味を持ったのか。どのようなことに不安を感じているのか。

応募や正式な面接の前に,そうした話をすることができます。

ここでも大切なのは,

よく見せるのではなく,よく知ってもらう。

ということだと思います。

そして今度は,求人側も求職者のことをよく知る。お互いに相手をよく知ったうえで,

「応募してみよう」
「ぜひ応募してほしい」

となれば,その後の応募や選考も,何も知らない状態から始める場合とは違ってくるのではないでしょうか。


事務所説明会,企業説明会

もうひとつの方法が,事務所説明会,企業説明会です。

説明会では,仕事内容,教育体制,働き方,キャリア,事務所や企業が大切にしていることなどを,求人広告より詳しく説明することができます。

所長だけではなく,実際に働いている所員や社員に参加してもらうこともできます。質疑応答の時間を設ければ,求職者から直接質問を受けることもできます。

パテントサロンでは,これまで,知財系求人求職フェアを開催してきました。その中で行われたオンライン事務所説明会,オンライン企業説明会について,求人広告掲載者からは,

「文字情報で出せないアピールポイントなどを伝えられる貴重な機会」
「求職者の方に直接お伝えできる貴重な機会」
「業務への理解を深めて頂けたと思う」

といった声をいただいています。

一方,参加した求職者からも,

「求人広告ではわからない情報がプレゼンでわかった」
「採用ご担当の方とのやり取りの中で,おぼろげながら会社の風土を感じることができた」
「事務所の目指すビジョンや価値観を知ることは大切だと気付くことができた」

といった声をいただいています。

これらは,まさに,

求人広告で知る → 実際に話して,もっと知る

ことの意味を表しているのではないかと思います。


オンラインだから参加しやすいこともある

説明会は,実際の事務所や会場で開催する方法もあれば,オンラインで開催する方法もあります。リアル開催で実際の職場を見てもらうことには,大きな意味があります。一方,オンラインには,参加するためのハードルを下げられるというメリットがあります。

アンケートでも,

「オンラインで気軽に参加できありがたい」

という声がありました。

また,現在の勤務先に転職活動をしていることを知られたくないため,説明会への参加を躊躇するという声もありました。その方からは,匿名で参加できるオンライン説明会や,個人情報を登録せずに見られる説明動画はありがたい,という意見をいただいています。

リアルとオンライン。どちらか一方がよいということではないと思います。実際の職場を見てもらいたいなら,リアルの説明会。より気軽に,多くの人に参加してもらいたいなら,オンライン。両方を行う方法もあります。何を知ってもらいたいのか,誰に参加してもらいたいのかによって,方法を考えるとよいと思います。


カジュアル面談や説明会を,見つけてもらう

カジュアル面談や説明会を実施するのであれば,それを求職者に知ってもらうことも大切です。

パテントサロンの求人スクエアでは,カジュアル面談を実施している求人広告について,求人スクエアの求人一覧のページに「カジュアル面談マーク」を表示しています。

求職者は求人一覧を見るだけで,

「この事務所では,応募する前に話を聞くことができるんだ」

と知ることができます。

また,事務所説明会,企業説明会などの情報は,求人スクエアのイベント情報コーナーに掲載しています。説明会の情報は,開催日順に見ることができます。求人広告をひとつずつ開いて説明会の情報を探さなくても,これからどのような説明会が開催されるのかを知ることができます。

紹介動画について前回書いたことと同じように,カジュアル面談や説明会も,実施するだけではなく,それを求職者に見つけてもらうことが大切です。

また,「カジュアル面談マーク」が付いていることや,説明会を開催していること自体が,「私たちは,自分たちのことをもっと知ってもらいたいと思っています」という求人側から求職者へのメッセージにもなるのではないかと思います。求職者に積極的に情報を提供しようとしている事務所,企業であることを知ってもらう,ひとつのきっかけにもなるかもしれません。


求人広告から,実際に話すところまで

ここまでの4回のコラムを振り返ってみます。

最初から,いきなり応募する必要はありません。まず,求人広告を読む。給与,働き方,仕事内容,教育体制,職場環境などについて知る。

次に,紹介動画を見る。所長や先輩所員がどんな人なのか。どんな場所で働くのか。どんな雰囲気の職場なのか。文章だけでは分からなかったことを知る。

そして,もう少し知りたいと思ったら,カジュアル面談や説明会で,実際に話してみる。質問してみる。求人側も,求職者の話を聞いてみる。

求人広告で知る
紹介動画でもっと知る
実際に話して,お互いを知る

一段ずつ,相手のことを知っていく。

その結果,

「自分には合わないかもしれない」

と分かることもあるでしょう。それも,失敗ではありません。応募する前に分かったのであれば,むしろミスマッチを防ぐことができたと考えることもできます。

そして,

「ここで働いてみたい」
「この人に応募してほしい」

と双方が思えれば,応募,選考へと進む。そのような流れができればよいと思います。


さらに,実際に働いてみることはできないか

「お互いをよく知る」ということをさらに進めると,もうひとつ考えられることがあります。実際に,その職場で働いてみることです。

たとえば,インターンのような方法です。

求人広告をいくら詳しく読んでも,紹介動画を何本見ても,面談や説明会でたくさん話しても,実際にその職場で働いてみなければ分からないことがあります。

実際に何日か,あるいは何週間か一緒に過ごしてみれば,求職者は,その職場についてかなり深く知ることができるでしょう。求人側も,その人がどのような人なのかを,より深く知ることができます。

双方が相手のことを十分に知ることができれば,入所,入社してから,

「思っていたのと違った」

となる可能性を,さらに小さくできるかもしれません。

実は,私はこのような方法について,何人かの事務所経営者に話をしてみたことがあります。しかし,あまり現実的ではない,という意見もいただきました。特許事務所では,クライアントの機密情報を扱います。そのため,外部の人を一定期間事務所内に受け入れることは難しい。特に,ほかの事務所や企業に在籍したまま受け入れることは難しく,実施するとすれば退職後になるのではないか,といった意見もありました。

確かに,簡単ではないと思います。また,「インターン」という制度の位置づけや,実際に作業をしてもらう場合の雇用,報酬など,具体的な実施方法については別途検討が必要です。

それでも,ミスマッチを減らすという意味では,実際に同じ職場で一定の時間を過ごすことには,大きな意味があると思います。

たとえば,数日から数週間,通常の業務スペースとは分けられた会議室などに通ってもらう。そこで,事務所の仕事についてのセミナーを受けてもらう。機密情報に触れない範囲で,簡単な課題などに取り組んでもらう。所員と話をする。そのような方法も考えられるかもしれません。

もちろん,これが実際に可能なのか,どのような形で行うのがよいのかは,さらに検討する必要があります。

しかし,実際に一緒に時間を過ごして,お互いをもっと知る という考え方そのものには,検討する価値があるのではないかと思っています。数日間の体験入所など,いかがでしょうか?


そんな求人一覧になったら,壮観だと思う

今回の一連のコラムで書いてきたことが,少しずつ実現したらどうなるでしょうか。

求人スクエアの求人一覧のページに並んでいる,ひとつひとつの求人広告の内容がとても充実している。給与や働き方について詳しく書かれている。仕事内容が具体的に書かれている。教育について書かれている。どのような人たちが働いているのかが分かる。その事務所や企業が何を大切にしているのかが書かれている。紹介動画がある。カジュアル面談がある。事務所説明会,企業説明会がある。ひとつひとつの求人広告に,その事務所や企業の特徴や考え方が,びっしりと表れている。

そんな求人広告が求人スクエアにずらっと並んでいたら,壮観だと思います。転職を考えている人にとっては,もちろん役に立つでしょう。

でも,それだけではないと思います。今は転職を考えていない知財業界の人が見ても,

「こんな事務所があるんだ」
「こんな働き方をしている会社があるんだ」
「こんな考え方で人を育てている事務所があるんだ」

と知ることができます。

さらに,知財業界以外の人が見ても,

「知財業界って,こんなところなんだ」

と知ってもらえるかもしれません。

求人情報が,単に人を募集するためだけの情報ではなく,それぞれの事務所や企業を知ってもらうための情報になる。そして,それらがたくさん集まることで,知財業界そのものを知ってもらうための情報にもなる。知財業界に興味を持つ人が増えるかもしれません。知財業界で働いてみたいと思う人が増えるかもしれません。そんなところまでつながっていったら,とても面白いと思います。


主役は,求人側と求職側

求人求職活動において,パテントサロンができることは,わずかです。パテントサロンが,求人側と求職側の相性を決めることはできません。採用を成功させることも,転職を成功させることもできません。

できるのは,どうすれば,必要な情報が,必要な人に,よりよく伝わるのか。それを考え,実践していくことくらいです。

主役は,求人情報です。そして,その求人情報を作成し,公開する事務所,企業です。その情報を受け取り,自分に合う職場を探す求職者です。ぜひ,自分たちのことがよく分かる,充実した情報を公開してください。そして求職者のみなさんには,その情報をしっかり受け取って,自分に合う職場を探してほしいと思います。

求人広告で知る。紹介動画でもっと知る。実際に話して,お互いを知る。

そのうえで,

「ここに転職してよかった」
「この人を採用してよかった」

という出会いにつながってほしいと思います。

応募の数を増やすことだけが目的ではありません。採用の数を増やすことだけが目的でもありません。求人側と求職側がお互いをよく知り,自分たちに合う相手と出会う。そして,双方がハッピーになる。そんな出会いが少しずつ増えていけば,知財業界全体が,じんわりとハッピーになっていくのではないでしょうか。

さらに,充実した求人情報がたくさん集まり,知財業界の外から見ても,

「知財業界って,いい業界だな」

と思ってもらえるようになったら,もっとよいと思います。

パテントサロンは,そのために少しでも役に立てるよう,これからも,効果的な情報の伝え方を考え,実践していきたいと思います。

(おわり)

パテントサロン管理人 大坪 和久
info@patentsalon.com


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